「驚いたことに、僕が3セット連続で取って、終わってしまいました。」

「栗林君は、ショックだったでしょうね」と町会長。

「結果が信じられなかったらしく、『数分経ってから、もう1回お願いできない』と言ってきました。」

「それで、どうしたのですか」と町会長。

「望むところだったので、梅澤さんにもう一度審判をお願いしました。」

「結果は、どうなったのですか」と町会長。

「また、3セット連続先取して、僕が勝ってしまいました。梅澤さんは、栗林君の往生際が悪いのが気に入らなかったらしく、『渡辺さんは、急に強くなったみたいだね』と嫌味を言っていました。」

「長年の間に、実力が逆転してしまっていたのですね」と町会長。

「そうなんですよ。僕はショックでしたね。」

「渡辺さんは、昔のように強い栗林君と対戦したかったのですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。今考えると、僕も栗林君と同じように動体視力が低下していたのですが、僕の方が強かったのです。」

「なぜ、実力が逆転してしまったのですか」と町会長。

「梅澤さんは、いわおちゃんと似たスタイルだったのですが、僕の動体視力が低下していたため、フォアサイドへの3球目攻撃が返せなかったのです。」

「腎の治療をしていても、動体視力の低下は止められなかったのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。衣食住は陽だったのですが、テニスやゴルフ、スキーに打ち込んだため、脳の機能低下がひどかったのです。」

「栗林君は陰陽が分からないタイプだったのですか」と町会長。

「栗林君は、陰陽が分かる天才ですが、僕と同じようにテニスとゴルフに打ち込んだだけでなく、ガンの手術もしています。」

「ガンの手術をしているのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

「それでは、栗林君は大酒飲みだったのですか」と町会長。

「それが、栗林君と酒を飲んだ記憶がないのです。」

「酒を飲まなくてもガンになることがあるのですか」と町会長。

「ガンになる家系というのがあるのです。」

「それでは、栗林君のお父さんか、お母さんがガンで亡くなっているということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。両親ともガンで亡くなっています。お母さんは、何度もガンの手術を受けています。」

「そんな家系があるのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。今考えると、『遺伝性非ポリポーシス大腸癌』だったのだと思います。」

「『遺伝性非ポリポーシス大腸癌』は、DNAミスマッチ修復酵素の変異で起こるのでしたね」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

2021/4/27

<筆者の一言>
筆者は何を食べても太るということがなかったため、『30過ぎたら痩せるのは難しい』という忠告の意味を理解していなかった。息子も、親が体重のことを気にしたことがないので、体重について気にしたことはなかったようだ。

筆者は、若い頃、『ニューヨークのビジネスマンは、体重をコントロールするために毎日走っている』という記事を読んだのを思い出した。米国では、太っている人は自己をコントロールする能力がないだめな人間とみなされるためだという。『30過ぎたら痩せるのは難しい』という忠告は、現在の日本人は米国文化に感化され、『太っているやつはだめな人間』とみなされるようになっているのではないかということに、突然、気がついた。そうだとすれば、息子が太ってしまったということが仕事に影響を与えることは避けられないと思われるので、ウェブで調べてみた。<続く>

2024/4/17